大学で簿記を教えながら、教材や説明の仕方を考えています。何を伝えるかはもちろんですが、どの言葉で、どんな順番で伝えるか。ここにも、教える側の工夫が必要なのだと思います。
自分では分かっていることでも、初めて聞く人に説明しようとすると、簡単ではありません。頭の中ではつながっている話も、その途中を省いてしまえば、聞く側にはつながりが見えなくなります。
僕が普段使っている言葉も、初めて聞く人にとっては、その言葉自体が新しい知識です。内容を理解しながら、言葉の意味も考える。それを一度にお願いしているのかもしれないと思うと、説明の組み立て方をもっと考えたくなります。
たとえば、これから簿記の説明をするときは、いきなり用語から入るだけでなく、身近な買い物の場面から始めてみたいです。「仕事で使うノートを買って、その場でお金を払った」。まず何が起きたかを思い浮かべてもらい、それをどう記録するかにつなげる、という順番です。
言葉を先に覚えてもらう説明も必要ですが、場面が浮かんでから言葉を知る方が、入りやすいこともあるはずです。同じ内容でも、入口を変えると、説明の仕方は随分変わりそうです。
ただ、身近な例にすれば、それで十分というわけでもありません。例え話は、理解するための手がかりです。その例だけで全部を説明できるように話してしまわないよう、どこまで同じで、どこから違うのかも大切にしたいと思います。
やさしく伝えようとして、大事な意味まで変えてしまっては困ります。最初は日常の言葉で伝え、必要なところで正式な言葉と結びつける。分かりやすさと正確さを、両方大切にできる説明を目指したいです。
もう一つ意識したいのは、話す前に「今回、何を一つ持ち帰ってもらいたいか」を決めておくことです。知っていることを全部並べると、どこが大事なのかが見えにくくなるかもしれません。
まず伝えたいことを決めて、そのために必要な説明を順番に置いていく。詳しい話を足す前に、最初の部分が伝わっているか確かめる。そんな進め方を、これから意識してみたいと思っています。
そのとき、「分かりましたか」と聞くだけで終わらないようにもしたいです。たとえば、「この例の、どの部分が分かりにくかったですか」と聞いてみる。言葉なのか、話の順番なのか、例そのものなのか。迷った場所が分かれば、僕の説明も直しやすくなります。
これは、税理士として説明するときにもつながります。相手が知りたいことは何か、どこまで知っているかを確かめてから話す。同じ内容でも、相手に合わせて入口や順番を考えられるようになりたいです。
教える側にいるからこそ、説明を見直す機会をもらえるのだと思います。自分の知識を、別の言葉や例で組み立て直す。そこには難しさもありますが、工夫する面白さもあると感じています。
まずは次の説明を準備するときに、専門用語を一つ選んで、身近な場面から話すならどう伝えるかを考えてみます。
「僕は知っている」で終わらず、相手に伝わる形にして届ける。学生にも、顧問先さんにも、分かるきっかけを渡せるように。僕自身も、少しずつ説明を磨いていきたいです。

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